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別海実顕地バイオガスnow


バイオガス使用後の固形分は敷料に利用

バイオガス使用後の固形分は敷料に利用

再生可能エネルギ―自給率150% !?
毛色の変わった話もたまには
3月、福島原発大惨事から4年。別海実顕地メタンガス発電を開始して1年経ちました。当初は泡対策など立ち上げに付きもののゴタゴタもありましたが、昨年9月頃からはメタンガスも順調に発生し熱利用とガス発電が安定して続いています。実顕地育ちのメタン菌たちも1年経って発酵槽にも馴染み、活発に動き始めたのかもしれません。

別海は豪雪地帯になったのか?? 週末ごとに低気圧が北上、道東沖に達し大雪、猛吹雪になり強風や送電線の電圧変動の影響でエンジンが停止したり、糞尿不足でガスの発生が低下したりなどままトラブルも起きますが、最近は連続して発電することが多くなりました。24時間最大出力で発電すると一般家庭一戸が年間使用する電気のおおよそ11ヶ月分を生み出します。

昨年3月から1年間で発生した、東京ドームの容積の約45%にあたる55万メタンガスを燃やし約105万kWh、およそ300戸分の発電をしました。最近の安定した発電量から予想すると今年は120万kWh程度、昨年別海実顕地全体で使った電気は75万kWhですから電気に限れば150~160%程度はメタンガス発電で賄えるようです。

発電の過程で発生する熱をお湯に変えての利用も昨年4月に哺乳舎、10月から催乳施設、牛舎事務所と計画した全てで始まり、牛乳殺菌、機器洗浄、乳房清拭用タオル1日2600枚の洗濯、作業を終えてのシャワーなどで使っています。

ガスエンジンで約80℃に温められた不凍液が全長200メートルほど地下埋設したパイプを通ってそれぞれの施設に送られ、熱交換器を介し水を約40~45℃のお湯にしてエンジンに戻ってきます。熱を奪われ不凍液は60℃位に温度が下がりますが、また、エンジン室で約80℃に温められ循環しお湯を作っています。
そのためか?厳寒期の今年1・2月の灯油使用量は前年に比べ30%、2000リットル減り、年間にするとかなり減りそうですがゼロにはなりません。今後は毎日19トン生産される暖かい牛乳の温度を利用して熱交換しお湯を作る設備も作り、併用して灯油使用量を更に減らすことにも取り組んでいきたいと考えています。

発酵槽をいつも40℃に維持することが最優先です。その為、これ以上どの程度の熱利用が可能か、初めての冬をむかえお湯の温度変化をみてきましたが、発酵槽内も既に温まっていますし常時お湯を使うわけでもありませんのでまだハウス栽培でも楽しめる余裕はありそうです。夏の有り余る熱利用はさてどうしますか? 未だ名案なしです。

乳牛は合計で1日の約50%は横臥していますから快適な牛床を用意することは牛飼いの努めです。その一つとして牛床に“オガ粉”など敷料を十分に入れることがありますが、年々地元でのオガ粉の発生は減って手に入り難く値も上がり、最近は仕方なく輸入物を使ったりで年間の経費は結構なものです。
この対策として発酵後の消化液に残る草の繊維分を敷料として利用することとし、8月から固液分離機を本格稼働させて1日6ほどの固形分、“オガ粉”ならぬ“バイオ粉”を分離し、そのまま手を加えずに専用機を使い6群の催乳牛に4日毎のローテーションで投入、600頭が利用しています。月にダンプトラック6~7台分、年間2000にもなり量も金額もばかになりません。

湧別の安富獣医さんがこの“バイオ粉”の乳房炎原因菌の細菌数検査をし、その結果を見て「勇気の持てる情報だ」とコメントをくれていますし、投入開始からの毎日の出荷乳検査でも評価できる安定した数値が続いていますので、検査を続けながらより安全で効果的な使い方を見つけていきたいと話し合っています。

消化液も冬の間、 “もう要らない”と言いたくなるほど貯留槽に溜まってきていますが、春5月、待ってましたとばかり伸びる牧草と先を競って散布するための、20トン積みのタンカー3台の準備もでき本格的な利用がはじまります。消化液の肥料成分の分析も終え、それに不足する肥料の設計、見積もりを始めていますが、草地への効果が表れるまでには時間が必要でしょう。

北海道大学 松田従三名誉教授のセミナー資料によると乳用牛100頭の糞尿の二酸化炭素(CO2)排出量はバイオで30.7トン(CO2/100頭・年)、今までのやり方のスラリー(液肥)処理で123.2トン、堆肥処理で273トンになると書かれています。
これからすると別海の施設では6倍、600頭がスラリー処理からバイオガス処理に変わりましたから年間555トンのCO2排出量を減らしたことになります。また100頭の糞尿からのメタンガス発電でCO2の排出量を47.5トン減らせるとありますからその6倍の285トン、合計840トンのCO2の排出量を1年間で削減していることになります。
興味深いのは、これらのことから電力1kWh当たりのCO2排出削減量にすると、乳牛の糞尿処理と発電分を合わせて3㎏、これに対し太陽・火・風力は0.5㎏、バイオガス発電は6倍のCO2削減効果があるとのことです。もっとも、乳牛を飼っていての話でしょうし、牛のゲップがやり玉にあがったりもしますから地球温暖化の影響に果たしてどれ程貢献しているのか?
メタンガス発電が実顕地で使っているエネルギー使用全体にどの程度の影響があるものなのか?興味と期待もあり調べてみました。

予想する年間総発電量120万kWhは熱量にすると10億3200万kcal、灯油に換算すると 11万8千リットル、ドラム缶590本にもなる計算です。昨年実顕地で燃やした灯油の量は76300リットル、これを電力量に換算すると78万kWhで、使った電気は75万kWhですから合計で153万kWh。冬の厳しく長い別海ですが灯油の方が多いとは予想外です。現状の反映か、ここは考えどこかもしれません。

大規模なのか?無駄使いか?33万kWh足りません。これ以外に牛舎や飼料栽培や生活などで走り回る多くの車輌の燃料、プロパンガスなど莫大なエネルギーを使っていて、発電時の熱エネルギーを最大限利用しても、600頭の牛だけではお手上げ、とてもとても背負いきれません。

こうだと解ったら片っ端から要らない電気は消し、人も乗ってないのに動いているエンジンは切り、古い車は修理せず数を減らし、身の丈に合った建物の利用も考え・・・あと何がある?大津波や福島原発の惨事を目の当たりにした時は、自身のこれからの生活スタイルについても少しは考えたかと思いますが、時が経つと情けないことに薄れてきます。豊かな社会の省エネ、二酸化炭素削減はゆるくない !

2015年3月17日 別海実顕地 酪農部 荒木靖
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コメント

  • 静岡県 浜松市   後藤信善

    地球温暖化、二酸化炭素削減等に興味が有ります。今後もぜひ発信し続けてください。
    私は寒さが苦手ですが、夏になり機会があれば見に行きたいと思います。 
    娘さんはお元気ですか?昨年の9月研鑽学校で一緒?でした。

  • 安倍 徹(三重)

    私はいま三重県地球温暖化防止活動推進員をやらせて貰っていますが、太陽光発電に陰りが見えた昨今その他の再生可能エネルギーに凄く興味を持っていて 春日山実顕地にも足を運んでいます、今私はオフグリットに取り組んでいます、稼いだ給料全部注ぎ込んで、限りなく電気代0円を目指していますが、未だカーボンオフセットの対象になっておらず、金ばかり食っています、貴発電所では削減した電気代を二酸化炭素に換算してJクレジットに売っているのでしょうか、バイオガス発電の技術もさることながらその辺にも とても興味を持っております。 よろしく!

  • 鎌田茂樹(西宮供給所)

    興味深く読ませていただきました。
    規模が大きいだけに、環境に対しても、社会に対しても大きな影響力があると実感です。
    牛乳の熱をエネルギーに変換、面白いです。

  • 山本孝志(岡部)

    今年は是非参観に行きたいです。