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【エッセイ】
あやめたちと群青色



夕方 公人の丘 あやめ池

丘を下れば あやめの群生 斜め上から観るのがきれい

ベンチに座って 声をかける

風が吹いて あやめたちが 頬をゆらす

夕日が あやめたちの 紫の頬を染めている

風が吹くと 口々に 「それでいいのですか」と聞いてくる

風が止むと 何事もなかった様に 頬は明るく輝いている

また 風が吹いて 口々に 「それでいいのですか」と聞いてくる

目を上げれば あたり一面の新緑 息づいて 芳香を放っている

青の匂いが一面に立ち上って 空気を震わしている

遠くに 薄い緑の雑木林 君たちも この地を離れることはないだろう

他の木々と 保ち合いつつ 季節がめぐる

だから それはそれとして 今は

風が吹いて あやめたちが 頬をゆらす

落日が あやめたちの 頬を 深紅に染める

また 風が吹いて 口々に 「それでいいのですか」と聞いてくる

そして 風が止んで 何事もなかった様に あやめたちは 

だから それはそれとして 歩むことに・・・・

夜 あやめたちと 群青色に染まる 

【春日山実顕地 柳文夫】