ページを印刷 ページを印刷

加賀日和


 
 昨日まで石川勝子さんのお母さんが滞在していた。89歳。二年振りの滞在。少し小さくなったかなと。

 勝子さんが9カ月の時に満州からひきあげてきた。お父さんはシベリア抑留で5年後に戻られた。歳とったせいか、少しボケたかなぁと思いきや、なかなかかくしゃくとしている。

 
 ロビーで「ここは気楽そうやなあ」と母。「苦労が多くて」と冗談気味に勝子。「それはおまえが間違っているからや。」びしっと母。

 愛和館で食事をしながら、「このつけものどうや?」と勝子。「へたくそっ。おまえにこんな風に教えた覚えないわ。」と母。「あんたに習った覚えないわっ。」勝子。

 

 
 こんな会話が軽妙に続く。一階には空いた部屋がないのでお母さんの部屋は二階。いつもは一階に暮らす勝子さんはこの間はずっとお母さんとこの六畳一間で一緒。母子でどんな風にしてるのかなと思いを寄せながら、部屋の前を通り過ぎると、ふたりで童謡、赤とんぼを歌う声が聞こえてきた。

 
 
 今日は皆でイモ掘り、9月中頃から妹尾進・薫夫妻が配置になって、愛犬アンも一緒。地中からさつまいもがにゅっと出てくる。手で土をかきながら、ふと妙な感覚におちいった。 土がイモの形になった。 うぅん?

【加賀実顕地 新村正人】