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盲導犬ベルチュ
【エッセイ】


盲導犬のベルチュ(特講交流研で)

盲導犬のベルチュ~特講交流研で~

ご主人が講習会に参加するので いっしょに来た 盲導犬のベルチュ

父は ラブラドール 母は カーリィコールテット・ラブラドール

漆黒の10才 オスである

主人を守って そばを離れることはないという

その犬を どうしたらいいのかと 何回も 研鑽会はもたれた

けっきょく 来る前に いろいろ考えるより

来てから 世話係の判断に ゆだねることになった

4日目 

クロは タタミの会場に いつも 主人といっしょに居る

気持ちがあふれて 泣いたりするひとがいたら  寄っていって

そのひとの そばに すわったりする 盲導犬のベルチュ

することがないのか きんちょうがとれたかのか

ついつい 横倒しに 寝てしまうという ベルチュの話も聞いた

役目を 忘れかけたのかな 盲導犬のベルチュ君

6日目 

交流会の夜 ベルチュの知らない人が 僕を含めて10人もいる 小さな会場

ベルチュは 全盲のご主人の 左で寝ている

話は佳境に入っている

ベルチュは 横になって すっかり眠っている

何の 夢をみているのか 小さく ワンワン と吠えた

つぎは グーグーと いびきを かきはじめた

「吠えないし 寝ない」のが  盲導犬の役目らしいのだが

どうやら ベルチュは 普段の役目から 解き放たれて

盲導犬であることを 忘れだしたのかも 知れない

交流会のあと バスの乗車口  

ご主人が いくら声をかけても バスに乗ろうとはしない

足を踏ん張って 僕たち村人のそばから 離れようとしない

「あ、こっちがいいのかな」「イヤイヤしてるよ」「どーしよう」

「ベルチュ、バスにのるよ」「ベルチュ、行くんだよ」

みんなで声をかける やっと納得したのか ベルチュ

引っぱるご主人に促されて ようやく「バスの中の犬」となった

8日目に聞いた話では 

「階段はひとりで上っちゃうし」

「廊下でおしっこしちゃうし、なんか普通の犬に戻ったみたいよ」

さてさて 盲導犬のベルチュ君 滋賀県の自宅にもどったら

盲導犬の役目を 思い出してくれるのか

すこし 心配しているんですよ

春日山のみんなで

ベルチュ

【春日山実顕地 柳文夫】