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根来(ねごろ )
【エッセイ】


2013/12/13
根来

根来

和歌山の 根来寺付近に 根来塗りといわれる 漆器(しっき)があった

僧坊や 宿坊で使った 什器(じゅうき)である

16世紀 根来には 根来衆といわれる 鉄砲を持った僧兵集団がおり

秀吉の焼き討ちで 3000あったといわれる僧坊は 灰燼(かいじん)に帰し

根来塗りの 工人達たちは 技と共に 各地に散った

この時代の 生活什器である「根来塗り」といえるものは 一点

足附盤(あしつきばん)が 常陸(ひたち)の寺に 伝わるのみである

時代は下って いわゆる 根来といわれる 木の椀(わん)は 

木地師の削った 椀の口に 補強のために 麻布を張り 錆(さび)下地をつくる

漆(うるし)部屋に入って 黒漆を 数度塗ってから 炭で研(と)ぐ 

さらに 赤漆を 刷毛(はけ)の模様 そのままに 一度塗る

十年 百年 二百年 と経ち 什器の赤漆は 少しずつ削れて 剥(は)げてくる

すると 研がれた なめらかな下地の黒漆が だんだんに 顔を 見せてくる

えもいわれぬ 赤と黒の抽象模様が 浮かび上がってくるのだ

椀や盤 湯つぎや文机 什器の表面は 微妙に変化をつづけ 

その「根来」を 使った人びとの

哀歓に満ちた 人生を 映し出すかのように 

深く 味わいのある色を 奏でるのである

根来は 「用の美」 

使い込んで 生まれてくる美

年月を経るごとに 美しさを変えていく 根来

「ひとと こころが繋がっている 「繋がり」を「自己」という」

年をを経るごとに 深まるイズムといきたいが

そうも いかないのがイズム

それでも 年を経ると それぞれに それなりに 身に付く

イズムの やさしさというか 化け物というか

イズムは「用の美」 使い込めば それだけ

人類という 下地と ひとという 赤漆

「足を 引きずってでも やりとげなければならない こともある」

自己を 一体に 用いることで 美しくなっていく 人びと

「身も心も ボロボロとかいうじゃない

 だいぶ 身体の方は くたびれてきてるけど 心は 元気すぎるくらいよ

 ここで 暮らしていると ほんとに 自分は

 バカだナーって 気づくことがあるの フフッ

 みんなといるから みんなと暮らしているから 大丈夫

やりたいことが 多くて そう みんなとね・・・・

 エー なにー

 死んだ 後のことなんか 考えたことないなー わたし」

生き方が 全部 かおに あらわれてしまうというから 

みんな ことばや ふるまいに 出てくるのだから

うんうん そうかも知れないなどと 認め合って

愛し合う 家族でいたいよね 人類は

 

【春日山実顕地 柳文夫】