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よう、どうしたい屁も出ねェのかい【別海バイオガス発電】


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久堅のひかりのどけき春の日にしづ 心 なく泡のきえらむ
と、まァーこんないい調子で蝦夷山桜のひらひらと散るに合わせ悩みの泡もぷちぷちと消えていってくれた。どうしたかって?なに、簡単なことさ飯をやらず、知らんぷりしてしばらく放っぽいておいたまでよ。
しかし泡が消えたと喜んだはいいが、困ったことにこんどは屁をこかなくなった。なんたってこれが出ないことには何事も按配が悪い。特にこのエレキ商売は上がったりでどうしようもない。
しょうがない粥でもやるかと日に二~三頓ほど食わせ様子を見たが碌にしやしない。そらァー無理もない二千頓の図体をして日に五十頓もの大喰いにこれぽっちしかやらないんじゃ続けて屁のでる道理もないか。といって断食のあと一度に沢山食わす訳にいかない。 
こんなことを四月の終わりころから始めてふた月、具合いを見ながらぼちぼち飯の量を増やし、ようやく日に五十頓食わせ満腹させるまでにもってきたが、それでも回復が遅いのか十分に瓦斯が出ない。もっと精のでる鰻でも食わせろという奴もいるが、また泡を吹いて寝込まれては返す物も返せない。

そうこうするうち、なにを狂ったのか六月に入り季節が一気に真夏になり、発電機小屋の中は四十五度を超えて跳ね上がり熱いのなんの、発電機も熱射病でふらふら、警告灯はくるくる回り、今度は発電機が泡を吹いて停止する始末。慌てて風を送る細工をして機嫌をとり、湯をもっと使え、熱を逃がす仕掛けを早く造れと職人の尻を叩くも、アベノミスとやらの当世、どうするつもりかあぶないもんだ。

固液分離機も動かすとこんなにも敷き料が?牛に胃が四つあるのか?と疑いたくなるほどの繊維の山ができるが、六百頭の寝床を手で延べるには今は何かと難しく大欠伸をしている。これも八月、寝床に投入する機械の独逸からの到着で一気に解決するだろう。
毎日満腹し環境も良くなってきたのかそこそこ瓦斯は溜まり始め、いまは能力の七割程度は続けて電気を生むまでに回復してきた。五月は瓦斯の発生が少なく発電は思うようゆかなかったが、それでも村全体で使った一月分の電気は優に賄え、六月からはそれ以上の成果を期待できそうだ。

全国からの多くの交流組と共に別海夏の風物詩牧草収穫が始まり、今年は収穫したあと直ぐ草地に消化液を撒く追っかけ隊もでき、その活用が家業全体にどのような効果をもたらしてくれるのか楽しみな夏でもある。収穫前は雨続きで寒く、加えて冷夏予報で作物への影響も心配されたが、始まると全く雨は降らず暖かく連日休みなし、猛烈な速さで収穫が進み残り僅か百町ほど精鋭交流組もさすがお疲れの様子です。
別海瓦斯発電所界隈はこんな景色ですが、みなさん何となしに伝わりましたかな? 
ではまた、気の向いた時に

【二〇一四年 六月 三十日 別海実顕地 酪農部 荒木靖】