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バイオガス発電始まる(豊里)





「5! 4! 3! 2! 1! スタート!」と集まった人が掛け声をかけて、乳牛部の百合子さんがスイッチを入れたら、新しい大きな発電機が、軽快な音で回り始めて、発電がスタートしました。もう一台の発電機は本田さんと娘の青葉がスイッチを入れ、こちらも順調にスタート。これから発電が順調に進めば、一般家庭約400軒分の電気を生産することが出来ます。
数日前に、ガスが安定してきたところで、サンプリングして、燃焼試験をしてみたところ、青白い炎が出て、綺麗に燃えました。牛の糞を、直ぐに堆肥化していた時は、このメタンガスは大気に放出されていましたが、発酵槽に入れて、かき回して、じっと待っていると、少しずつこのガスが貯まってきます。
実は、このメタンガスの試験は、今から18年前に、一度やってみたことがあります。当時まだ、小野口さんが元気で、実顕地内を歩き回って、良さそうなメタン菌を捜しました。「ここにいたぞ!」という場所で、スコップで掘出しました。(場所は秘密ですが)このメタン菌と牛糞を、小さなタンクに入れて、毎日かき回していたら、2週間後に少しずつ、ガスが出てきました。バーナーの小さな炎を見て、とてもワクワクした気持ちになったものでした。しかし、牛糞がエネルギーに変わる事は理解できましたが、実用化プラント建設までには、まだまだ遠い道のりがありました。
その後、ドイツなどでは政策的なこともあって、実用化事例が増えて、基本的な仕組みは変わりませんが、運用上の技術が大きく進歩しました。少し遅れて、日本でも北海道でポツポツ始める農家が表れて、ヤマギシでも別海実顕地で、その後春日山実顕地で、スタートしました。
豊里実顕地はどうする、となった時、若いメンバーと一緒に、北海道でバイオガス発電やロボット牛舎をやっている酪農家を視察に行きました。施設を見せて頂いて、現場ならではのお話を聞かせてもらって、とても参考になりましたが、その事以上に、説明してくれた若い経営者の熱い心意気を感じて、将来に焦点を合わせていく考え方に、一同感じるものがありました。 視察や研鑽を重ねた後で、「バイオガス発電」というのは、生物そのものをエネルギーに変えていく仕組みであって、プラントは、その容器に過ぎない。つまり、新種の生き物を飼育していく、という事であって、「飼育のセンス」がとても大事だという事です。どんなに素晴らしいプラントを作っても、飼育が出来なければ、一歩も進まない。つまり、仕組みや技術以上に、心意気が大事という事だとなりました。これを数式にすると、(仕組み20+技術30)×心意気50 ということでしょうか。このあたりの醸成が、バイオガスプラント建設が始まるためのカギになったように思います。
建設はとても大掛かりで、大型ミキサー車200台分のコンクリート、鉄筋80トン、北海道で作られた部品、ドイツ製の発電機などの材料と、土木、機械、電気、大工、防水、板金、等々沢山の技術者の方に来て頂いた。こうした多くの方の力を駆使して建設したプラントで、今、既にここにあるものを原料にして、電気エネルギーを生産する事は、とても大事な意味を持つと思われます。遠く中東諸国から、石油を運んでこなくても、牛糞とマンパワーで地域内電力の一部を賄う事が出来るという事になり、エネルギーの地域内循環が、持続可能な発展の大きな要素になっていくと思われます。 バイガススプラントという形は一応完成しましたが、これからが本番です。知恵を寄せて、心を寄せて、実顕地づくりの場として、進んでいけたらと思います。

豊里実顕地  後藤 健





私は参画する前、四日市コンビナートの化学工場の発電所で仕事をしていました。
そこで新しい発電ユニットを導入するのに、採算面が合わなくて10年くらいかかってやっと微粉炭ボイラーのユニットを立ち上げたところでした。参画するころに美里実顕地で、藤河さんにヤマギシでも発電所をやりましょうと熱く言われましたが、正直?とは言っても実際難しいよね”と思っていました。発電単価は規模が小さくなるほど高くなるのがわかっていたので。

もともと「自分たちの使うエネルギーは自前の自然エネルギーでまかなえたらいいよね」というのはずっと理想として持っていて、実顕地でもエネルギーに関係することに関わらしてもらうようになっても、まずはエネルギーの使用を減らすことと考えてやってきました。

バイオガス発電をやろうよと云うのはずいぶん前から亀山さんから言われていて、自分なりに色々調べたり売り込みに来た話を聞いたりしましたが、うまく行っている実績もなくとても実現は困難だと思っていました。

3年半前春日山でバイオガス発電をやるのでちょっと手伝ってというので北海道の建設現場を見に行きました。そこで土谷特殊農機具という会社の人たちにお会いしてこの人たちと一緒ならできると直感しました。原発が止まり自然エネルギーの買取りという状況もあり、実現性が一気に高まりました。

でも豊里の場合、まず牛舎です。春日山でバイオガス発電に合わせてロボット牛舎を建設しました。敷料の少ない乳牛の糞尿がバイオガス発電には最適です。新牛舎と合わせてバイオガス発電をするのが理想的で、どこに新牛舎を作るのかが決まって、どこにバイオガス発電を作るかということになります。

新牛舎の建設が今までのフリーストールの位置に決まって、バイオもやろうということなり、当初プールの駐車場で考えました。その後発酵槽2基の案が有力になり、駐車場では実際工事無理となりグランド案になりました。着工寸前、発酵槽1基で27mに変更になり落ち着きました。何回も配置案を書き直しましたが、出来上がっていい配置になったのと思えるのは嬉しいですね。

発電は開始しますが。発酵槽の中はまだ70%ぐらいしか溜まってなくて、固液分離とか排水処理が動くのは来月です。発電が始まると発電量とほぼ同じ熱エネルギーが出ます。それをどう有効に生かしていくか、冬はどこも熱エネルギー欲しいのですが、夏これを有効に使う手立てはないか、次の課題がもうそこに。

自前のエネルギー(それも糞尿からとれた)で自分たちの使うエネルギーを賄うという夢に1歩進みました。生み出すエネルギーを増やすのはそう簡単ではないですが、使う方を減らすのは技術の進歩にも助けられどんどん減らせると思うので、エネルギーの自給という夢もいずれ達成できるのではないかと思うと嬉しくてたまりません。

豊里実顕地  加藤道雄

アルバムを見る⇒豊里バイオガス発電
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