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農業が創る未来-ヤマギシズム農法から【書籍】


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村岡到さんがヤマギシについての著書・第二弾を刊行
『農業が創る未来-ヤマギシズム農法から』(ロゴス)

 昨年3月に『ユートピアの模索-ヤマギシ会の到達点』を刊行した社会評論家、社会運動家の村岡到さんが、その続編ともいえる著書『農業が創る未来-ヤマギシズム農法から』を12月末に刊行しました。

【実顕地広報部】

 


─刊行にあたって─
「農業を基礎にした生活の力強さ」
村岡 到

 『農業が創る未来 ─ ヤマギシズム農法から』を編集・刊行した。昨年三月に出した『ユートピアの模索 ─ ヤマギシ会の到達点』の続編である。
 この本を書くために、六川実顕地、大潟実顕地、別海実顕地を夏に訪問した。大潟もそうだったが、別海はさらに広大で圧倒された。快晴の摩周湖にも案内していただいた。一九五〇年代の苦難に満ちた歩みも教えられた。六川の杉本健三さん、上中佐代子さん、大潟の岩サダさん、別海の岩崎昭子さん、豊里の菊池法道・よしえ夫婦、みな半世紀をこえて実顕地で生活し、八〇歳をこえて朝は畑で収穫したり、元気だ(杉本さんは七四歳)。日本は高齢化社会となり、限界集落が一万カ所にも広がり、高齢者がひっそりと孤絶している時代に、ヤマギシ会の老蘇さんたちは、孫の笑顔に包まれて健やかな日常生活を送っている。これだけでも特筆に値いするが、その土台にヤマギシ会の農業があることを知らなくてはならない。
 私とヤマギシ会との出会いは誠にグッドタイミングだった。私は長く社会主義を希求して活動してきたが、近年、マルクス主義の限界を痛感して、二〇〇二年に「自然・農業と社会主義」を書いて、農業の根源的な意義を掴みとり、また愛情の大切な意味を理解するようになった。ヤマギシ会は、私の見るところ、今年、豊里実顕地で豊里ファームをスタートさせたように新しい動向に向かい始めた。その両者が出会うことができたのは幸いである。時期がずれていれば、共鳴することなく、反発していたかもしれない。
 農業についての基礎的な理解がなければ、ヤマギシ会の農業の意味を掴むことはできなかった。ヤマギシズム農法は、ソ連邦での集団農業の破綻を超える道を指し示していると、私は考える。自然の摂理に学び、大地と調和して生きることを真剣に追求しているからである。「適期作業」や「循環農法」はその現れである。TPP参加によって、日本の農業は大打撃を受けるであろうが、活路はヤマギシズム農法にあると言っても過言ではないだろう。
 一九九〇年代の刊行物(『ヤマギシズム』など)にも目を通して整理したし、前著『ユートピアの模索』への批評などへの応答も収録したので、ヤマギシ会を理解する助けになるだろう。本紙に連載している佐川清和さんの論文も第6章として収録されている。グラビアも八頁あり、美しい別海の風景も楽しめる。
 最後になったが、お世話になった方々に深く感謝します。
 ヤマギシ会のみなさんが歩んできた道がさらに広がることを強く希望します。

新刊内容紹介

『農業が創る未来-ヤマギシズム農法から』目次
 まえがき
 序 章 農業についての基礎知識
     1 農業の根源的な意義
     2 民俗学との接点
第一章 日本農業の困難な現状
第二章 夢ふくらむ豊里ファーム
     1 豊里ファームのスタート
     2 なぜ開店できたのか
     3 小さい一歩だが大きな可能性
第三章 ヤマギシズム農法の実績と現状
     1 農事組合法人のトップに躍り出たヤマギシ会
     2 農業関連の世界では以前から注目あびる
     3 足立恭一郎氏の研究
     4 農林水産省の東海農政局による紹介
     5 「耕畜連携」の先駆的実践
     6 ヤマギシズム農法の担い手による探求
第四章 各地の実顕地
     1 別海実顕地─余りに広大な大地で
     2 大潟実顕地─壮大な干拓事業に合流
     3 春日山実顕地─ヤマギシ会発祥の地
     4 豊里実顕地─地域の農家とともに
     5 六川実顕地─小さな盆地で古くから
第五章 ヤマギシズム農法の特徴と意義
     1 ヤマギシズム農法の特徴
     2 何と命名すべきか
     3 ソ連邦での「集団農業」の破綻を超えるカギ
     4 残された課題
第六章 「自然と人為の調和」とは何か 佐川清和
終 章 農業が創る未来へ
付 章 『ユートピアの模索』の反響とリプライ
 あとがき
 コラム 土地はみんなのもの
     農業保護産業論
     「研鑽」とは何?