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真相は藪の中・・・
でもなんか清々しい


 今日の昼、実顕地入り口の芝生を刈っていたら、60歳位のおばちゃんが声を掛けてきた。
 聞いてみると、卵販売機のおつりが少ないと言う。1000円入れて、250円の白玉パック(10個入りパック2個)を買ったら300円しか出てこないと言う。450円のつり不足だ。

 ちょうど昼時で、販売機を見ている産業事務所が昼休みだ。兎に角対応しなければと、洋子さんに電話した。
 こういう時には携帯電話は便利である。ただし草刈しているときは電源が入っていても呼び出し音や振動は聞こえないし伝わらない。それで時々おこられることがある。
 それはともかく、洋子さんは、今は対応できないので本巣さんに電話してくれと言う。
 急いで本巣さんに電話したら、今生活館のほうに戻っているので、現場に来るのに20分程掛かると言う。

 声をかけてきたおばさんの後ろのほうを見ると、4人のおばさんやおばあさんたちがいる。いやあ、たくさんの人を待たしているなあと思った。

 そこで自分の方法で対応しようと思い、

「お釣りをすぐに持ってきますから」
と言って、少し待ってもらうように頼んだ。

向こうも、

『仕事中にすいませんね』
と言っている。

 100メートルほど離れて置いてあった作業車まで駆けていってそれに乗って、家へ戻った。久し振りに全力疾走したので息が上がった。部屋に入って財布を掴んで車に戻った。

 現場に戻ると、おばあちゃんたちが首を長くして待っていた。財布から1000円出して左側の販売機(つりの出なかったのは右側の販売機)に入れ250円の白玉パックを買った。おばあちゃんたちが見守る中で

「自分にとっては初めての経験でしてね。」
とか言いながら、あれなかなか蓋が開かないなと、引くところを上に持ち上げようとしてまごついている自分がいる。

 何とかパックとつり銭を得て、おばあちゃんに不足分のつり、450円を渡し、買った250円の白玉パックをお待たせ代としてあげた。始めは遠慮して受け取ろうとしなかったが、何とか持っていってもらった。

「ご迷惑をおかけしました。」

「お仕事のじゃまをさせてすみません。」
など言い合って別れた。

 本巣さんには、700円頂戴と、事の顛末を連絡した。

 彼は、
「機械だからつりを間違えることはないはずだ、安井さんならそのことは分かるでしょう。それにお年寄りの場合には勘違いとかでよくそういう、つり銭が足らないというトラブルがあるんですよ。」
という。

 でも、おばあちゃんたち5人が居て、
「1000円札を入れて250円の卵を買ったら300円しかおつりが出なかった。」
と言ってきている。

 自分にはまず、「そうか」と受けいれたい。そのことがどうかと考えることももちろん出来るが、それは後のことにしたい。

 一志の卵を買ってくれる人たちがいる。その人たちが何かの不都合で、嫌な思いを持って帰らないですむような対応をしたい。
 そのことが直接卵販売機に関わらない自分に出来るせめてもの、最大のすることではないかと思っての一連の行動であった。

 瞬時に思い行動して得た結果、他からの評価に関係なく、自分が清々しく思えた事件であった。

 しかし真相は藪の中である。

【一志実顕地 安井利夫】