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虹が立つ場所
【エッセイ】


-網野善彦の本をよんで- 2013-09

古代 人々の暮らしは 

贈り合いの暮らし

贈り 贈られる関係

これを学術用語で 贈与互酬というらしい

時代は進み  神と俗界をつなぐ 虹の架け橋

虹の立つ場所に 「市」が 立ったという

つまりは 有縁地縁から 脱却した流通経済を「市場」というのである

男も女も自由に しがらみから外れて 求めるものを 求めに

あるいは なにかを 探しに 

自らの持てるものを 抱え 背に負い 車を引き

異文化体験を求めて 各地から「市」にやって来るのである

交換経済の始まりである 交歓社会ということもできる

そして 質の良いものは 多くの物品に換わるのである

14世紀 宋から 宋銭が輸入され 「宋銭」がそれ自体で価値を持つ頃

米や絹から いつのまにか 銭が 価値の基準に 替わってくる

その頃から ものの価値を 銭で計るように なってしまうのであるが

古来 虹の立つ場所は 「市」の立つ場所 河原であり 屋敷の中であり

ものが寄ってくる 人が寄ってくる 「市」

必要なものが 必要なときに 必要なだけ 得られる仕組みとも

こころが 豊かになる空間 あの人とまた会えるかも知れないし

あの ほほえみが 「市」に 溢れている

あの 品物は 「市」以外では 手に入らない

あの 食べ物は 「市」でしか 食べられない 味わえない

五感は歓びに満ち 五臓六腑にも 染み渡るのである

今は お金で ものが 動くように見えるけれど

お金に関係なく 動くもの そういったものが おのずと働くところ

こころが寄って なにかが 動き出す場所でもある

虹が立つ 空間

虹を引きよせてしまう なにかが

豊里ファーム

【春日山実顕地 柳文夫】

虹のある場所