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モンゴル実習生ナサーさん、作文コンクールで最優秀賞


懇親会会場では、JITCOからのインタビューもありました。

懇親会会場では、JITCOからのインタビューもありました。


豊里のモンゴル実習生3期生のナサーさんが「第24回外国人技能実習生日本語作文コンクール」に応募した作品が、最優秀賞に選ばれました。
この作文コンクールは、国際研修協力機構(JITCO)が、技能実習生の日本語能力向上のため実施している大変重要な事業で、毎年、国籍では10カ国を超える技能実習生が、多数応募しています。
今年の応募総数1937編の中から、27編が入選作品に選ばれ、ナサーさんの作品は、その中でも4人に与えられる最優秀賞を受賞しました。

10月7日、東京の経団連会館で行われた国際研修協力機構交流大会「日本語作文コンクール表彰式」に招待され、表彰状授与、演壇で受賞作品の朗読発表、懇親会に参加しました。

懇親会は他の受賞者やヤマギシでは「亜細亜の橋」にあたる監理団体の方たちとの交流の場でした。
受賞した27名の中にモンゴル人実習生が他の会社を含めて4人もいて「国の誇りです」と関係者皆で喜びを分かち合い、何度も一緒に記念撮影するという場面もありました。
また他の監理団体の方からも「おめでとうございます」「日本語が上手ですね」と何人もの方から声をかけていただきました。
「自分は審査員として1937通全部の作品を読んだけど、個人的にはあなたの作品が一番だと思っていますよ」と言うJITCOの方もありました。
どこも実習生に対する悩みは同じのようで「どうしたらそんなに日本語を上達できたのですか?」という質問も何度もありました。
「会社の人たちと、仕事だけでなく生活を共にしていて、日本語を教えてもらったり、仕事以外のこともたくさん学んでいます。少し前まで夜の時間などモンゴル人同士で部屋に集まっていた頃は頭の中がモンゴル語になっていたけど、それをしなくなったら頭の中が日本語になりました」など、私もそばにいましたが、ナサーは一人で堂々と答えていました。

今回私はナサーと一緒に式典に参加させてもらって、朗読発表が終わるまではその時間が近づけば近づくほど緊張が高まり、じっとしていられず、ナサーや隣に座っている他社の方と「緊張するね」と何度も顔を見合わせたり。
発表が無事終わり、たくさんの方からお祝いの言葉をかけられた時には我が子の晴れの日のようにうれしく思う気持ちと同時に、これまでの色々な出来事も思い出されました。
4年前から実顕地でモンゴル実習生を受け入れてきました。
この間、「色々あったね」という一言にはとてもとても納まりきれない経験を豊里の皆で受け止めてきたと感慨深いものがあります。
​そして、それはとてもいい刺激にもなり、私たちの本当にやりたいことはなんだろうと何度も確認しながら進んできました。
このことを通して自分はもちろん、豊里実顕地のみんなで成長してきたなと改めて心に留める機会になりました。

豊里実顕地 沖永雅子

<受賞した作文>
「私は仔牛のお母さんです」ナサンジャラガル
 私は仔牛のお母さんです。この言葉をみなさんが聞いたらおかしいと思うでしょう。
私も最初は「コウシ」は子供の名前かなと思いました。
 私は一年半前モンゴルから酪農の研修に来ました。酪農部に来て、初めは仕事のことが何もわからないので先輩の君江さんと二か月間毎日一緒に仕事をしました。その時君江さんが「あなたは仔牛のお母さんだよ」と言ったのでびっくりしました。「私は牛じゃないけどな。ジョークを言ってるのかなあ」と思って笑っただけでした。でも今は私は本当に仔牛のお母さんになったと思っています。
 仔牛が生まれたらすぐ私の所に来ます。仔牛の体を拭いて、体重をはかって、元気かどうか、よく観察して、耳に番号をつけて、初乳を飲ませます。そこからお母さんの仕事が始まります。大きい健康な牛になるようにお世話して、愛して、育てます。
 牛はストレスに敏感な動物ですから、安心して快適に生活できるように、牛舎の温度、乾燥、清潔、消毒などが大切です。エサ、ミルク、草とかご飯の時間は毎日同じにして、その都度適切なお世話をします。
 私は毎日、どんな感じで一番元気に育つかを考えています。
 人間のお母さんは自分の子供をどんな風に愛したりお世話しているか、それと同じ気持ちでやるのが一番大切です。
 動物は人間の様に話せないし、考えることもできないけど、自分を育ててくれる人の気持ちがわかるみたいです。牛は自分と担当する人の匂いと動きがわかるみたいです。私の仔牛も私がいない時、寂しい、私に会いたい気持ちがあるみたいと牛の動きから私は思いました。人間のお母さんは子供が何も言わなくても、何が欲しいとか、何を考えてるのかわかります。それと同じです。
 私達遊牧民族のモンゴル人の目から見て、定住型の習慣と日本の様な牛の飼い方はとても面白いと思いました。そしてそれを学ぶためにモンゴルから遠い日本に来ました。
日本の人たちの様になりたいと思ってやってきたことが、私に「仔牛のお母さん」の名前の本当の意味をわからせてくれたと思います。
 そして私は牛のことだけではなく職場の日本の人達から色々なことを学びました。特に一日二回、生後十日までの仔牛の哺乳の仕事は職場の女の人全員でやります。それは皆で一緒にやるのでとても楽しい時間です。
 私はこうやって仔牛のお母さんになりました。もっともっといいお母さんになれるように努力します。
 そしてもう一つこの一年半の間に人・動物・自然の関係を考えました。私は人間、仔牛は動物、私と牛、牛と私の関係を考えた時、牛の気持ちがわかるようになりました。それがとてもうれしいです。
 今から私は牛舎へ行きます。子どもたちが待っていますから。

img_6249<受賞の喜び>
この賞を頂けることは今でも信じられません。でもとってもうれしかったです。今たくさんの人の顔が思い出されます。
日本で実習をしているこの期間、今やっている仕事に気持ちを込めて、職場の人達と一つの心でやってきました。そのことで私は様々なすばらしいことを学び、この作文を書くことができました。ですから職場の人達、仔牛達にありがとうの気持ちで一杯です。今オリンピックをやっていますが、モンゴルでは見たことがないたくさんの競技で日本人はメダルをとっていますね。それとテクノロジーは世界で一番だと思います。また日本には色々な大会やイベントがあります。私もマラソン大会、花火大会、お祭りに参加しました。日本にいる間に自分にできることを何でも体験してみたいです。そして日本語の本もたくさん読みたいです。そのために日本語をもっと勉強して上手になりたいです。


受賞者と審査員で記念撮影

受賞者と審査員で記念撮影


応募したナサー手書きの原文です。