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ふれあいインタビュー


日本胚移植技術研究会大会で研究発表

   豊里実顕・肉牛部の中江果林さん(34)

豊里実顕地でも発表して村人に聴いてもらいました

豊里実顕地でも発表して村人に聴いてもらいました




時間を忘れる位、仕事が面白いという中江果林さん。9月21日に三重大学で開かれた日本胚移植技術研究会大会(三重大会)で「F1への2卵移植と3産取り肥育を目指して」と題した実用レベルの研究発表をしました。
 実践に基づいた発表に参加者から大きな反響があり、ますますの活躍が期待される中江さんにお話を聞きました。(聞き手:喜田栄子)

Q あんな大きな場での発表で緊張しませんでしたか?質疑応答も堂々としていましたね。
A 何度も打ち合わせを重ねて準備を進めてきたので、発表は何とかいけましたが、前の晩は緊張で2時間しか眠れませんでした(笑)。

Q 日本胚移植技術研究大会というのは?
A 畜産関係の研究機関や大学、獣医師らによる、年に一度の研究発表の場です。300人位来ていました。

Q 日頃は肉牛部の繁殖部門でやっているのですね?
A 肉牛部は繁殖部門、子牛部門、肥育部門があります。豊里実顕地で受精卵移植を始めたのは1992年と聞いています。私は繁殖部門でやりだして7年目です。日頃は和牛受精卵の検卵(顕微鏡で見る)、受精卵の凍結保存をしています。
 凍結保存した受精卵は、北海道から九州まで全国で活用してもらってます。顕微鏡を覗いてる時間がすごく楽しいです。あとは事務。和牛はとにかく書類が多いです。それから、繁殖部門の人たちが円滑に仕事できるようにするのが、一番大事な役割かな。

Q 今回、発表したのは?
A 積み重ねてきた日頃やっている実践例を発表しました。
 「研究会」というだけあって、発表内容はほとんどが研究成果の発表です。試験した頭数でも、だいたい10頭くらい。うちは1000頭とか2000頭とかのデータだから、説得力があったのだと思います。
 豊里では乳牛への受精卵移植も長年やっているのですが、今回は発表内容をF1への受精卵移植のみに絞って発表しました。

Q 具体的にはどんな内容なの?
A 豊里肉牛部では、F1メス牛への和牛受精卵移植によって和牛を生産しています。分かりやすく言うと「代理母出産」といったところかな。F1というのは、母が乳牛で父が和牛のハーフの牛のことをいいます。
 F1への受精卵移植を始めた1992年からずっと、1産したら肥育して肉用出荷する“1産取り肥育”をしてきたのですが、2013年から、1産したF1に和牛受精卵を2卵移植して、双子を産んでもらう取り組みを始めました(2産取り肥育)。昨年からは、2産したF1に更に2卵移植をして、また双子を産んでもらう3産取り肥育を始めました。うまくいけば、3回のお産で5頭の和牛を生産できます。

Q 発表して、反応は?
A 発表時間が決まっていて、短い時間の中で伝えたいことだけをピックアップして発表したので、もっと聞きたい、どんなことでも聞きたい、といった反応をいただきました。
 F1への受精卵移植で成功している事例が全国でもほとんどないそうで、講演をしてほしいとか、論文を書きなさいとか、来年の和歌山大会でも発表を、とか…。あとは「私が思い描いていた理想そのものだ」と言ってくれる方もいました。

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Q 子育てしながら研修とか大変でしたね?
A 滋賀県と愛知県とに長期間勉強に行かせてもらいました。「やるなら今!」と、その時に思いっきりエネルギーをかけさせてもらいました。3人子どもがいながら、こんなことがやれるのも、村の暮らしと、夫を含め周りのサポートがあったから。これは本当にありがたいです。

Q 豊里での発表には突然のお知らせに関わらず、大勢の人が聞きに来ていましたね?
A 聞きに来てくれるのは10人くらいかな…と思っていたら、ものすごく大勢来てくれました。大会の発表で使ったスライドを使って、でも話すのは畜産未経験者でも解るように意識して話しました。皆さん一生懸命聴いてくれて、質問もたくさんもらいました。牛の繁殖のことに興味を持ってもらうのは、とっても嬉しいです。

広報部  喜田栄子