ページを印刷 ページを印刷

村の暮らし 42 阪神タイガース【ブログ 春日山 葡萄の記】


S__93913101
♪ 六甲颪(おろし)に 颯爽(さっそう)と 蒼天翔ける 日輪の ♪

11月5日、日本シリーズ阪神優勝 万々歳

普段は、大事な夜の時間をプロ野球に奪われるのを恐れて、
テレビの野球中継は観ないことにしている。

しかしながら、春日山の阪神ファンの「熱き語らい」を聞いていると、
どこからか、蠢(うごめ)くモノがあって、
「掛布、岡田、バースさま」という1985年のフレーズが蘇ってくる。
この3人の順番がヒトによって違うのも面白い。
なんせ、古い昔のことだ。
それに、今度の日本シリーズは、勝ったら38年ぶりと来ている。

東京生まれの僕は、当然「巨人、大鵬、卵焼き」である。
子供の頃に、年に1回あるかないかの、
読売新聞がくれる後楽園球場の外野席。
遠い中山道の都電に乗り、往復30円なりを払って、コッペパンをかじり、
小指ぐらいに見える選手に応援したが、2回とも巨人は負けた。
池袋までの地下鉄は片道40円であったから、高嶺の花であったのだ。

大体、ヤナギ君の応援と、阪神の勝利とは、関係ないのである。
宇宙的視野でみれば、そこはかとなく関係しているともいえるのだが、
実感が湧かない。
好きな本を読み、駄文を書く方が、生きている実感が湧くのである。
「同じでしょう」といわれれば「そうです・・・けど」と
どこかに「主体」があるかのように思いたがるヤナギ君がいる。

阪神とオリックス、3対3で迎えた第7戦最終戦。
第6戦は山本由伸投手に完敗し、第7戦はどうなるか。

眠い目をこすりながらのテレビの前の大観戦。
ときどき拍手をする。
「やった」なんて声をあげながら。
力量が拮抗(きっこう)する両軍に、
ハラハラドキドキの毎日であった。

さて、球場の無数の熱き阪神ファンが泪を流して、歓んでいる。
自分の人生に重ね合わせて、生きている実感。
応援する自分がいつになく自分を取り戻したかのように、
自分の「思い入れに」泪しているのであるが、
まあ、そんな屁理屈は置いて、
ともかく、悔いある自分の人生が、充実しているかのようになるのだ。
「うるせーな、勝手だろ」なんていわれそう。
いやいや、決して、否定しているわけではありません。

夢中になれるのは、恋愛であれ、競馬であれ、野球であれ、読書であれ、
何でも良いのであります。ハイ。

それでも、どこか阪神ファンとか広島ファンとかの郷土愛を、
「うらやましいな」と思ってしまう。
東京なんて、つまらないなと思ってしまう。
「だって」なのだ。

その昔、夜の登りの阪神電車の車中、阪神の帽子とユニホームを着た人々。
たぶん、負けたらしいと分かるのだ。
応援の疲れか、一斉に、居眠りをしているのである。
ヤナギ君は「馬鹿みたい」と一瞬思ったが、
これが大阪人のノリなのかと、
「なにか、なぜだか、嬉しくなった」のを覚えている。
球場ではユニホームを着ても、球場を出ればサッサと脱ぐのが東京である。
「そんなことは、ありませんよ、今の東京は」といわれたら、
二言もありません。時代が変ったということです。


明日の昼、春日山の阪神ファンが集まって「優勝記念の会」をするとのこと。
「にわかの阪神ファンのヤナギさんもどうかな」って声をかけられた。
行ってみよう、「大阪人のノリに乗ってみようぜ、ヤナギ君」

さて、当日、大きな自家製のデコレーションケーキとクラッッカー。
司会の挨拶に始まり、六甲おろしの大合唱、シャンペンまであって、
シリーズを思い返して、語るヒト、ヒト。
阪神のユニホームを着た「おっさん」もいる。
「エッ、ヤマギシでしょ」「そんなこと関係ない」「のり、のり」なのだ。

ヤナギ君は、新聞で見た、カーネル・サンダースのことに触れた。
ケンタキーフライドチキンの創業者である。
1985年、阪神タイガースがリーグ優勝した際、
興奮した阪神ファンは、
お店にあったカーネルの像を道頓堀川に投げ入れた。
その年の日本一は獲得したが、その後、阪神は長い低迷が続いた。
38年の間に11回最下位を経験した。
コレを「カーネルの呪い」というそうである。
1985年、岡田選手で日本一を獲得し、
2023年、岡田監督で日本一を取り返し、
ようやく、カーネルの呪いから解放されたのではないか。など。

「そんなこともあったけど、どうでもいいじゃナーイ」
「勝ちゃあイイのだ、優勝ダヨ」という雰囲気のみなさんである。

さて、国道25号線のどこかで、馬鹿デカイ「浴槽」の宣伝看板があった。
阪神のバースの写真入りである。

あっと、バースと浴槽。なんだ、そうだったのか。「バス」だったのだ。
今更ながら、合点がいった。ダジャレなのだ。
「オモシロー」「さすが、関西」

2023年、まだまだ暑さを感じる秋。しかし、もうすぐ、冬なのであります。
皆様、お身体を大切に。

春日山実顕地  柳 文夫